2012年3月9日金曜日

【ビジネスアイ・コラム】デューデリジェンスの不在


以前のエントリーをプロが編集してくれました。文字数で約半分になっています。

【ビジネスアイ・コラム】デューデリジェンスの不在

AIJ投資顧問事件の問題の本質は、運用手法でもなければケイマンという租税回避地でもない。ましてや投資顧問会社の規模が小さくて信用がおけないから、届け出制から登録制に戻すというような問題でもない。AIJは2000億円近くの資産規模を持ち、厚労省OBと共同で設立したコンサルティング会社のお墨付きまでもらっていたのである。

今回の事件の責任は、厳しいようだがAIJを選んでしまった、投資リテラシー不足の基金の運用サイドにもある。制度的な制約から5.5%という一世代前の非現実的な目標利回りを背負い、運用しなければならないという基金の問題も、先送りせず解決しておかなければならないだろう。

一般には租税回避地のヘッジ・ファンドは危険であるとの認識もあるだろうが、そんなに危険なものがこれほど大きな世界的ビジネスになる理由がない。ヘッジ・ファンドの買い手はファンドの選別時に「デュー・デリジェンス」を行う。「デュー・デリジェンス」とは、そのファンドが投資に値するかどうかを調査することである。

ヘッジ・ファンドを組成しようと思えば、まずプライム・ブローカーを指定しなければならない。これは証券会社の信用取引口座と思えばよい。怪しげなスキームのファンドでは、ゴールドマンやUBSなど大手証券は口座を開設してはくれない。口座開設を許可するということは、与信行為である。彼らもファンドに対して「デュー・デリジェンス」を行うのである。

次にファンド組成にかかわった弁護士事務所の名前を開示し、ファンドの資産を管理する受託銀行名を開示しなければならない。一般に投資家は、ファンドの残高を運用者を経由せずに直接受託銀行に尋ねることができる。この口座を監査する会計事務所の名前も必要だ。

投資家はファンド組成にかかわるメンバーの顔ぶれ(一流なのか二流なのか、あるいは一流をそろえすぎてコストが高くないか)をみながら、とりあえずファンドの健全性を値踏みしていくのだ。運用成績を検討するのは、それからだ。

ではなぜAIJにはこうした仕組みが機能しなかったのか、あくまで筆者の推測であるが、基金はAIJと投資一任契約を結び、AIJは契約の範囲で彼らの運用する私募ファンドを資産に組み入れた。この場合このファンドのデュー・デリジェンスを行うのは、基金の投資顧問であるAIJ投資顧問自身。したがって、何でもアリということになってしまう。

投資顧問の行動を監視するのは基金運用者の責任である。こうした現実を直視せず、政府与党や責任官庁が保身のためにイメージだけで規制強化に走るのであれば、ただでさえ競争劣位にある日本の資産運用業界にマイナスに作用するだけではなく、投資リテラシーの不足による被害も後をたたない、ということになるだろう。

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