2012年6月20日水曜日

【ビジネスアイコラム】「2つの危機の根っこにあるもの」



世界中の金融市場から注目されていたギリシャの選挙は財政緊縮派の新民主主義党(ND)が第一党となった。市場はなぜか「ユーロ残留か否か」の命題に単純化していたが、対立政党である急進左派連合(SYRIZA)もユーロ離脱を主張していたわけではない。しかしとりあえず、世界は「ギリシャはユーロへの残留を選択した」と受け取った。

しかし選挙が終わってみれば、もっとも重要な反応はギリシャではなく、銀行危機に揺れるスペインの国債利回りが7%を越えたことだった。ギリシャ問題とスペイン問題は現象面では異なるが、本質は同根である。

ギリシャの選挙では確かに新民主主義党が第一党となったが、得票数だけでいえば、緊縮反対派の方が多数であったことは見逃せない。第二党である急進左派連合は早々と連立を拒否し、反対勢力として活動することを声明している。彼らとしては、今回の選挙で勝たなくてよかったとの見方さえあるのだ。

このままでは政府は資金ショートし、7月の公務員給与の支払いさえ困難になる可能性がある。それを回避するためには金主であるEU、IMFを相手にさらなる緊縮財政、経済改革を伴うタフな交渉に臨まなければならない。ギリシャ国民にすれば相当に国辱的である上に、だからといって危機が解決する可能性ももはや薄い。だから左派急進派が「すべてが終わった後が出番だ」と考えてもおかしくない。

新民主主義党と連立を組むはずの全ギリシャ社会主義運動も選挙のたびに議席数を著しく勢力を落としており、このまま連立政権を組むことは党の存続にもかかわる。従って連立が組めず、もう一度選挙が行われる可能性も排除できない。

スペイン問題は、銀行支援に使われる資金の流れにある。ユーロの中央銀行である欧州中央銀行(ECB)から直接支援があればスペイン国債の利回りとは本来関係が薄いはずなのだが、資金はいったんスペイン政府が借り入れる形となった。このため、本来は累積債務が多くはないスペインなのだが返済能力に疑問符がつくことになった。しかしこれも予見可能だった。ECBを通じて金融政策だけを共通としながら、財政統合を果たしていない以上、スペインの銀行システムはスペイン政府の責任となるからだ。

ギリシャはたぶんもう終わっているが、スペインにはわずかな希望が残っている。

二つの問題が同根というのはこのことだ。ギリシャ問題も、ユーロの財政統合がなされていれば単純に救済されていたはずなのだ。ユーロ問題が始まって以来指摘され続けているこの問題は、あいかわらずドイツという負担を迫られる側の国民の出方次第なのである。

その意味で注目は28、29日のEU首脳会議だが、メルケル首相に対する過度な期待は禁物だ。ギリシャはたぶんもう終わっているが、スペインにはわずかながら希望が残されている。

2012年6月20日 ビジネスアイ一面コラムより、


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