2012年9月12日水曜日

【ビジネスアイコラム】歴史から教訓を学ぶには

2012年9月12日発売フジサンケイ ビジネスアイの一面コラムに掲載された記事です。
【ビジネスアイコラム】歴史から教訓を学ぶには


「ザ・ビッグ・ピクチャー」という米国の人気投資ブログで最近、1994年にペンシルベニア大学のジェレミー・シーゲル教授が書いた「Stocks For The Long Run」(邦訳:株式投資 第4版 日経BP社)が取り上げられた。この本は当時のベストセラーで、経済誌ビジネスウイークの書評でも「あらゆる時代を通じてベスト10に入る投資本の一つだ」と絶賛を受けたこともある。日本でもシーゲル教授の信奉者は多い。ロジックもしっかりしており、ファン層も知的である。

シーゲル教授は短期投資ならともかく、証券投資は保有期間が長くなるにつれ、株式のリターンは常に債券より有利であるだけではなく、インフレ率を控除するとリスクさえも低くなると主張した(ここでいうリターンとは配当を再投資したトータル・リターンである。税率は考慮されていない)。

The Big Picture "Revisiting Stocks for the Long Run"より

 この本のデータでは、1871年から1993年までのどの30年間をサンプルにとっても、株式投資がもたらすリターンは債券投資を上回っていた。日本でも「長期投資のすすめ」といった出版物やウェブ上の記事を多く見かけるが、そうした見解の一つの根拠になっていることが多い。

ところが、81年から2011年の9月までの30年間を調べると、1カ月間から30年間のどの期間を振り返っても、株式投資(SP500)のリターンは債券投資を下回っていたのである。もちろん30年ぐらいでは長期投資とはいえないなどと主張する向きもあるかもしれないが、しかしながらシーゲル教授自身、30年を目安としていたのである。

 こうなると日本はどうだったのか?と興味がわいてくるのは当然だろう。実は、日本でもこうしたトータル・リターンのデータはいくつか一般に公表されている。残念ながら認知度は低いが。

日興パーフォーマンス・インデックスより
Copyright 2005 NIKKO FINANCIAL INTELLIGENCE, Inc.
 

上記のグラフは日興パフォーマンス・インデックスのHPから作成した。シーゲル教授の本の出版された時期の日本はバブル崩壊後の株価低迷期だった。当時は株価回復期待が強く、年金基金の株式組み入れ比率が米国に比較して低すぎるなどの批判もよく見られたものだった。しかし、結果はグラフのとおりである。株式の長期投資を推奨する人は、決してこのグラフを使わないだろう。

では、今後は債券に大きく投資すべきかといえば、それでは逆に、シーゲル教授の教訓を軽んじてしまうことになる。私にとって、シーゲル教授の著書の中で一番印象に残っている文章は、著名投資家であり、金融に関する数々の著作を持つピーター・バーンスタインが書いた前書きである。彼はこうわれわれを戒める。「過去のデータがいかに教訓的であろうと、それは過去のできごとにすぎない」と。

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