2012年11月7日水曜日

【ビジネスアイ・コラム】田中文科相不認可問題


大臣の一声で認可左右 自由主義の否定にもつながる危険な権力行使 MSN産経

2012.11.7 11:16

 18世紀初頭のロンドンは株式ブームに沸いていた。新規ベンチャー企業が続々と設立されていたのだ。自分の会社へ資金が回らなくなることを恐れた南海会社のジョン・ブラントは政治力を発揮して1720年6月に「The Bubble Act(泡沫(ほうまつ)会社禁止法)」を成立させた。質の悪い会社の誕生を阻止するために設立特許取得に厳しいハードルを設けたのである(特許主義)。(フジサンケイビジネスアイ
 
http://www.library.hbs.edu/hc/historicalreturns/fb/slide3.html
 
これ以降、英国では新規会社設立には膨大な費用と時間が要求されるようになり、政治家や有力者とのコネが重要な要素となった。この法律は100年後に廃止されるが、18世紀英国の株式会社の発展を阻害したとされている。そして皮肉なことにジョン・ブラントの南海会社は質の悪い会社の代表として「南海バブル」と呼ばれ、歴史に名を残すことになった。
 特許主義や認可主義は、許認可を官庁の裁量に依存することになり、かつての国家社会主義国や共産圏諸国のように進歩や発展が役所の能力の範囲に限定されかねない。広く人知を集める資本主義社会には向いていないのである。腐敗も生じやすい。

 そこで考えられた方法が準則主義である。参入は自由が原則であるが、淘汰(とうた)による退出もある。低品質なものを排除するために一定のガイドラインを設けて開示し、それらをクリアしたものに関しては基本的に平等に認可しようという方法である。ここでは既得権益者による反対圧力も、有力政治家のコネも、天下りの受け入れも不要である(はずだ)。

従って逆にいうならば、もしも基準のクリアが明確な申請者に対して認可を与えないのであれば、それ相当の特別の事由が必要になる。さもなければすべてが裁量次第ということになってしまうからだ。

 筆者は専門家ではないが、文部科学省のHPによると日本の大学設置基準においても規制緩和がすすめられ、すでに認可を得るためにクリアすべき規則や法的な問題点が明示され準則化されている。申請から当局の審査、学生募集、開校までのおおよその時間的ガイドラインも示されているようだ。

 一方で規制緩和により多くの大学が開校され大学の質の低下が指摘されている。少子化もあって今後は大学の破綻も予想される。これらは間違いなく今後取り組むべき課題である。

 準則主義にのっとり準備をすすめていた3大学の認可が田中真紀子文科相によって否定された。新基準の下、もう一度審査するということのようだが、この問題は大臣の許認可における裁量権の逸脱の問題だけでなく、準則主義、ひいては自由主義の否定につながる非常に危険な権力行使である。大学設立に一定の基準を設けるのは当然である。質の低下が問題であるならば準則の基準を上げればよい。しかし大臣の鶴の一声で自由の府であるべき大学の認可が左右される国など真っ平ごめんなのである。

以上は本日のフジサンケイ・ビジネスアイ掲載の拙コラムから。

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この記事は田中文科相による3大学の不認可のニュースを受けて11月4日に書いたものです。紙の新聞のコラムの記事はネットとは違い緊急でもないケース以外ではどうしても書いてから掲載までに時間差があります。

5日、6日とマスコミでは僕の予想を上回って田中文科相への非難が盛り上がってきたので、記事の差し替えを提案しようと思って編集長に電話したのですが「まだいけるのではないか」ということで、相談して少しだけ訂正を入れてもらいました。

それが既得権益者による反対圧力も、有力政治家のコネも、天下りの受け入れも不要である(はずだ)。の(はずだ)です。

大学関係者の中には前職を辞めて転職してきた教員や進学予定者のように無辜(むこ)の人達が大勢いるわけですが、本来の規制緩和、自由競争の趣旨を逆用して利権に群がる人達も大勢いることは確かです。田中文科相のやり方は唐突で強引ですが、逆にそうした手法が「悪い奴ら」の所業を隠してしまわないかが心配になってきました。つまりあまり田中文科相を攻めるのに血道をあげ過ぎないで本質も見ておこうよ。と考えたのです。

文科省川平官房長は「行政手続き上、不認可の処分を出すとの決定はまだしていない。新しい基準の下で審査し、認可か不認可か決める」と発言しています。また「大学側に誤解を与えたならば訂正して謝罪する」とも述べています。「誤解」したのは不認可とされた3大学ではなく、「誤解」しているのはどう見ても文科省の方です。大臣の発言が行政手続きと何らの関係もないのであれば、大臣は行政に関する発言を今後は止めるべきです。さもなければ「誤解」だらけになるでしょう。

それにしても驚くべきは民主党の危機管理です。田中文科相は官邸にも報告済みということでしたが(これがウソということは無いでしょう)このような事態になることぐらい予想できそうなものです。
平時の経済戦争のみならず、今のように尖閣で緊張している時に現内閣は戦争をも含む外交問題への対処能力があるのかどうか本当に疑わしいと思うのです。相手に間違ったメッセージを送って誤解ばかりさせてしまうのではないでしょうか。読者は民主党外交最高顧問が誰だかご存知ですか?

しかしながら日本国民の悲しみは、「ならば誰の内閣ならば安心か」という選択肢が思いつかないところにあるのでしょう。学校法人であれば淘汰されていけば良いだけですが、国の方はそうもいきません。

 

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