2013年2月8日金曜日

【投資家のための金融史】 「超安定化」とリーマン・ショック


ビジネスアイ 【投資家のための金融史】

「超安定化」とリーマン・ショック

ここでの 「SP500実質値」は、SP500株価指数を消費者物価指数で現在から過去に遡(さかのぼ)ってインフレ調整した実質株価指数である。縦軸が対数グラフになっていることに注意が必要だ。



             
 (1)の1930年初頭からの大暴落の後、ニューディール政策、ブレトン・ウッズ体制が構築され、(2)ケインズ的な財政政策によって経済が安定した50年代、60年代に実質株価は大きく上昇した。
 その黄金の60年代が過ぎ、(3)70年代には、ニクソン・ショックと2度のオイルショックによってインフレにみまわれ実質株価は大きく調整した。(4)ボルカーFRB議長が金融政策でインフレに打ち勝った80年代からは、ケインズ主義に代わりレーガン大統領による大胆な規制緩和の新自由主義の政策がとられた。
 87年にFRB議長がボルカーからグリーンスパンに代わると、2006年までの間はGDP成長率や物価指数の変動が安定したために、1970年代の「グレート・リセッション」に対して「グレート・モデレーション(超安定化)」と呼ばれるようになった。この期間は米国のみならず、先進諸国全般においてこうした現象が見られた。

 いろいろと議論はあるが、超安定化の原因は、▽ボルカー議長以来の金融政策手段の発達▽IT(情報技術)の発達による生産管理技術の進展▽規制緩和による企業の自由度の進展-などが挙げられる。

 この時期を拡大して、SP500株価指数と実質株価指数の両方を書き込んだのが「グレート・モデレーションとリーマン・ショック」である。縦軸は通常に戻してある。
米国株式市場では2000年にかけてドットコム・バブルが発生し、SP500実質値はグレート・モデレーションの終了に先行してすでにピークを打っていた。連銀はドットコム・バブル崩壊に対して大胆な金融緩和で対処し、07年に向けての住宅バブルを発生させることになった。その結果が無理な与信の住宅ローンといわれたサブプライム・ローンであり、信用構造に無理のあった米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)など政府系金融機関の破綻だった。


 株式市場へのインパクトとしてはリーマン・ショックに注目せざるを得ないが、インフレ調整された実質株価指数では、株式市場の調整は2000年の時点からすでに始まっていたのである。
               

 日々のニュースで米国株式の高値更新が近いという報道を聞くが、物価を調整すると、実は12年末においてもまだ2000年のピークから約30%も調整している状態にある。SP500株価指数そのものを見ているだけなら高値圏内にいるように見えるが、実質値の形は違うのである。

 では、何が実質株価を抑制しているのだろうか? それは世界中の解決されていない問題が原因だろう。民間債務を政府債務に肩代わりさせたアメリカ。南欧問題を抱えるユーロ諸国。バブル崩壊以降の度重なる財政政策と高齢化による社会福祉費負担の増大にあえぐ日本。現在の先進諸国政府は、いずれも政府債務残高が積み上がった状態にある。どこかでデレバレッジが必要である。

 今後景気回復による税収増がこれを打ち消すのか、あるいは1ドラクマ・コインを2ドラクマに打ちなおしたギリシャ文明のディオニュシオスのように、政府債務はインフレーションによって返済されるのか。今後の市場が、これまでもそうであったように、予断を許さない状況にあることだけは確かなようだ。

Porco

0 件のコメント: