2013年4月28日日曜日

『金融の世界史―バブルと戦争と株式市場』(新潮選書)発売決定


私の2冊目の出版となる『金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書) 』は5月24日に発売の予定です。もう既にAmazonでは予約可能となっております。

このコンテンツは昨年7月から今年の2月までフジサンケイ・ビジネスアイに連載していた『投資家のための金融史』を新潮選書用に書きなおしたものです。但しビジネスアイは経営者、ビジネスマン向けの新聞ですので、金融・経済のテクニカル・タームの使用にはあまり気を使っていませんでしたが、新潮選書では一般の教養人向けということで、言葉の説明には気を使いました。やり方としては新潮社の編集者が読んでわかりづらいと感じたところを、僕が噛み砕いてわかりやすく書きなおしていくという単純な方法をとりました。

従って金融には詳しくなくとも、相当に本を読み込んでいる人間が基準になっているのではないかと思います。但し、『投資家のための金融史』というタイトルが読者を限定してしまうからという理由で直そうとした時に、『社会人のための金融史』でも範囲が狭いと指摘され、できるならば高校生にわかるぐらいが望ましいと出版社からはリクエストされました。残念ながら僕にはそうした物事を簡単にするような能力が充分に備わっているとは思えませんが、できるだけわかり易くなるようには頑張ったつもりです。

この本ではふれてはいませんが、「金融」というと「文学系??」の人はどうしてこれほど身構えるのかというのは、僕にとって、この本の編集を通しての少し意外な体験でした。レオス・キャピタル・ワークス(ひふみ投信・ひふみプラス)の藤野英人さんが、彼が教えている明治大の学生ですら受講の最初の頃は「お金は」汚いものと考える学生が多いと指摘しています。「金融」というだけで何か特別なもの、あるいは詐欺的なものというようなイメージが強いのかもしれません。でもそれは知らないだけ、学校の先生も知識がないし、大人になってもそうした機会はあまり多くありません。

この本のタイトルも最初は「欲望の歴史」にしようとか販売上色々な意見が出ました。僕にすればどこをどう読めば自分の書いた「金融の歴史」が「欲望の歴史」になるのかわからない。売らんがためにタイトルをイビツなものにすることこそ醜い欲望じゃないのかと思ったりもしました。それでも結局タイトルは穏便なものなり、何よりこうしたテーマを取り上げてくれた新潮選書には感謝しています。

この本は普通に読んで欲しい。「船の歴史」とか「スコッチ・ウィスキーの歴史」とか「カレーの歴史」とかと同じように読んで欲しいと思って書きました。実生活との関わりの割に、僕らは、「金融」について多分知らなさすぎる。


ここに目次を紹介しておきます。ぜんぶで72話+まえがき、があるのでこれだけでも結構な分量です。

第一章 金利も銀行もお金より先に産まれた
  1話 メソポタミアのタブレット
  2話 ハムラビ法典の上限金利規制
  3話 紀元前のマーチャント・バンク
  4話 牛や穀物で利子を考える
第二章 貨幣の幻想
  5話 ディオニュシオスの借金返済
  6話 紙幣は中国の発明
  7話 日本の貨幣の話
  8話 大きな石の貨幣の物語
第三章 アリストテレスの考え方
  9話 世界初のオプション取引
 10話 アリストテレスの財獲得術
 11話 ギリシャの両替商
 12話 ローマ法による財産権の確立
第四章 中世の宗教とお金の問題
 13話 中世キリスト教の考え方
 14話 パクス・イスラミカの恩恵
 15話 フィボナッチの偉大な貢献
 16話 ダティーニ文書 活気あふれる地中海世界
 17話 簿記の父ルカ・パチョリ
 18話 銀行創設の功績はヴェネツィアのもの
第五章 大航海時代
 19話 起業家の時代
 20話 新大陸からの銀流入―価格革命
 21話 ドルの起源
 22話 英国繁栄の礎を築いた海賊
 23話「ヴェニスの商人の資本論」再考
第六章 東インド会社と取引所
 24話 会社の誕生―特許株式と無限責任
 25話 東インド会社
 26話 取引所の歴史
 27話 チューリップ・バブルとカルヴァン派と欲得
第七章 国債と保険の始まり
 28話 国債の誕生―財政制度の大改革
 29話 損害保険の誕生―ロイズ・コーヒーハウス
 30話 多岐にわたる生命保険の起源
第八章 ミシシッピ会社と南海会社
 31話 戦争債務処理―南海会社の株式募集
 32話 ジョン・ローのミシシッピ会社買収
 33話 はじけた英仏バブル―資本蓄積に明暗
 34話 すずかけの木の下で
 35話 大坂堂島米会所
第九章 アムステルダムからロンドンへ
 36話 スコティッシュ・ウィドウズとコンソル国債
 37話 ナポレオンとロンドン市場
 38話 ニュートンが金本位制にした
 39話 国際通貨会議と通貨同盟
第一〇章 イギリスからアメリカへ
 40話 有限責任制と株式市場発展の基礎
 41話 鉄道と株式市場
 42話 南北戦争とリテール・セールス
 43話 メディアとダウ・ジョーンズ株価指数
第一一章 戦争と恐慌と
 44話 日露戦争に見る国際協調融資
 45話 第一次世界大戦と有価証券の大衆化
 46話 ワイマール共和国のハイパー・インフレーション
 47話 大暴落とチャップリンの『街の灯』
 48話 長期投資の幻と株価の回復
 49話 ペコラ委員会とグラス・スティーガル法
第一二章 大戦前後の日本の金融市場
 50話 戦前の株価指数
 51話 戦前のドル円相場
 52話 第二次世界大戦と東京株式市場
 53話 戦前の投資信託の話
 54話 焼け跡の二つの株式ブーム
第一三章 戦後からニクソン・ショックまで
 55話 第二次世界大戦とニューヨーク市場
 56話 ブレトン・ウッズ協定とGATT
 57話「黄金の六〇年代」と利回り革命
 58話 欧米に追いついた日本の高度経済成長
 59話 戦後の投資信託の盛衰と証券恐慌
 60話 ニクソン・ショックと金融テクノロジー
第一四章 日本のバブル
 61話 七〇年代のインフレとレーガン大統領
 62話 プラザ合意
 63話 ブラック・マンデーと流動性
 64話 金融制度から見る日本のバブル形成
第一五章 投資理論の展開
 65話 テクニカル分析と投資銀行
 66話 コウルズ委員会と株式市場の予想
 67話 ランダム・ウォーク理論と効率的市場仮説
 68話 オペレーション・リサーチとアセット・アロケーション
 69話 インデックス・ファンド
 70話 バフェット対ジェンセン
 71話 効率的市場仮説への攻撃
 72話 最後に―グレート・モデレーションとリーマン・ショック
 あとがき

5月は新潮社が新潮選書販売に力を入れる月です。店頭で特設コーナーが出来たり頑張ってくれると思います。

また、新潮社の読書情報月刊誌「波」ではその月の新刊書に対する書評が掲載されます。前作「日露戦争、資金調達の戦い」ではノンフィクションの大御所保阪正康さんにお願いしましたが、今回はこの本の趣旨にもあるように、同じような思いを持つ藤野英人さんにお願いしました。書評は「波」の発売後にネットで見れますので楽しみに待っていて下さい。

Porco 板谷敏彦


2013年4月25日木曜日

日本料理の贅沢


日本料理の贅沢 (講談社現代新書) 』神田裕行

神田裕行はミシュラン・ガイド東京において3年連続(この本の紹介時点、現在は6年連続)で三ツ星を獲得した元麻布「かんだ」のオーナーシェフである。パリの板前割烹「TOMO」の料理長として渡仏、欧州の美味しいものをたくさん食べ、英語とフランス語を話すようになったそうだ。

僕は旭屋出版の「お好み焼・たこ焼・いか焼・鉄板焼の教科書―売れる調理技術と成功する開店法 」や「餃子」「うどん」などの技術書は愛読して、普段から自分の料理に活用させて貰っているが、これまで料理人の本は読んだことが無かった。

最近はあまり読まなくなったが、昔は「おいしんぼ」を始めとする料理漫画はほとんど欠かさずに読んでいたから「うんちく」については嫌いな方じゃないと思う。しかし、今では知り合いのほぼ全員が「おいしんぼ」レベルのお料理リテラシーを持っているので、人前で「うんちく」をたれる情熱はすっかり失ってしまった。それよりはもうシンプルに美味いものを食べたいとだけ思っている。この本をどういう経緯で購入したのかは憶えてないが、Amazonで新刊を買っている記録があるから、多分ネットで誰かの書評に触発されたに違いない。そして目的は「うんちくたれ」では無かったのだと思う。

本の構成は、第1章が前菜で、順に各章お造り、お椀、お寿司、焼き魚、煮物、肉料理、ご飯、デザート、飲み物と「かんだ」で出される料理の順に章立てされている。そして其の中に神田氏のそれぞれの料理への考え方、哲学が、欧州での経験も踏まえながら解説されていく。

表題から連想されるこの本のテーマも哲学ぽいし、それだけを読み取っても十分に面白いのだけど、やはり彼は「うんちく」の料理評論家ではなく「現場の技術者」だから、基本的な調理方法に関しての記述は実に具体的かつ実用的なのだ。この本は料理の技術本、基本的な考え方に関する技術本だといっていいのだろうと思う。特に男厨の諸君にはその日の料理にすぐに応用可能なテクニックが数多く読み取れることだろう。鍋の大きさの選び方などは目から鱗だった。また経験的に大根の煮物は冷める時に味が染みることはわかっていたが、feu expansion とfeu a l'interieurの解説で実にすっきりした。

というわけでこの本は自分で料理する人には絶対お薦めである。そして、もちろん今度の旧友との再会にはかなり高度な「うんちく」をたれるつもりなのである。