2013年7月15日月曜日

『キメラ―満州国の肖像』山室信一著


世界史のなかの満洲帝国と日本 (WAC BUNKO) 』宮脇淳子著(WAC)を読んだ。筆者はモンゴル史、東洋史、高名な岡田英弘氏の奥さん。チャンネル桜などでは、日本の戦後教育における「自虐史観」について多く語られている。本書はTVでお見受けする印象とは少し違う。『キメラ―満洲国の肖像 (中公新書) 』山室信一著(中公新書)の読後に読むのにはいいと思う。多くを知ってから読むべきだ。またモンゴルなどの記述など、読んで良かったと思う。


昨年の『日露戦争、資金調達の戦い』(新潮選書)刊行後、色々なお手紙を頂戴し、また拙著に関して書かれたブログ記事を拝見したが、太平洋戦争についても同様のことを知りたい。戦費はどうなっているのかとのリクエストが多く寄せられた。またそうした企画も出版社から持ち込まれたものもあった。

しかしご存知のように「太平洋戦争」、「第2次世界大戦」、「15年戦争」、「あの戦争」などと様々な呼び方がされているとおり、どこからどこまでを戦争期間として捉えるのか?から始まり、学者ではなく作家として一般向けに書くには実にとらえどころが無いテーマである。そして戦費について記述された一般向け書籍は今のところ皆無である。専門書でも体系的に書かれたものはない。

日本はなぜ戦争を始めたのか、アメリカやロシアとの地政学的確執、軍やマスコミはひどかった、とか民衆自体が自身を追い込んで入ったとかの精神面での分析は流行りだけれども、一体予算はどうしていたのか、あるいはどう考えていたのか?その辺りは実はモヤモヤとしたままなのだ。

『金融の世界史』の51話「戦前のドル円相場」にも為替レートの動向をグラフにしておいたけれども、高橋是清が金本位制を離脱した後、ドル円は1ドル=2円から1ドル=3.5円へ(一時は4.734円までつける)大幅な円安になっている。乱暴に言えば円の価値は半分になったのだ。ドルベースで見ればグローバル比較での軍事費は一気に半分になったといえる。さらに円は開戦によって対ドルでは1ドル=8円(上海闇相場)と4分の1ぐらいまで低下したにもかかわらず。満州へお投資金額も資料面では円建てでのみが記載され、インフレ分の調整がなされていない。数%の差ならばともかく、実質価値が4分の1では比較にもう少し工夫が必要だろうと思う。

また、日露戦争と違うのは、植民地(韓国や台湾は併合であるから植民地ではないと主張する人がいるけれども)政策、特に通貨政策が複雑になってくる。日本が中国に設立した傀儡政府は満州だけでは無く、実は華北にいくつか作っている。これも通貨政策を調べればわかることだが、通常の日中戦争の本だけを読んでいては煩雑で飛ばしてしまう箇所に相当する。そんなことを知らない人が多いのだ。

したがって「あの戦争」を財政や通貨面から記述するのは煩雑で売れない本になるのは間違いない。だから誰も書かない。出版までこぎつけないのだと思う。

僕がこれにチャレンジするのかどうかは、今のところ保留だ。ただ、宮脇さんの本を読んでAmazonにたくさん本を発注した。興味は尽きない。



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