2013年8月19日月曜日

『101歳の人生をきく』 中川牧三+河合隼雄


101歳の人生をきく』 中川牧三+河合隼雄(講談社2004年)

この本も戦間期の上海の様子を知る目的のために読んだ本である。対談形式なので3時間もあれば読める。しかも格別に面白い。これまで僕が読んだどんな対談形式の本よりも、壮大で、ユニークでそして「すごすぎる」。大きな図書館にはおいてあるようだし、アマゾンを見ると新刊はもう無いが中古で安い本が出ているので最大級のお薦めをしたいと思う。

対談は心理学者の河合隼雄(1928~2007年:対談当時76歳)と音楽家中川牧三(1902~2008年3月19日:対談当時101歳)。この中川さんが、第2次世界大戦当時、陸軍報道部の将校として上海に赴任して、沈みがちな上海の音楽を盛り上げていたのだ。僕はそのことだけを知っていて、この本を読み始めたのだが、この人の経歴はすごすぎる。

あんまり書くとネタバレで面白くなくなるから遠慮するが、20代の時にシベリア鉄道のトーマス・クック特別車両で釜山からベルリンまで13日間かけて超豪華なシベリア横断旅行をしている。運賃は二人(近衛文麿の弟で指揮者の秀麿と同行)で21万円。当時米キロ19銭、豆腐一丁5銭、ビール大瓶37銭、どうでもいいなこんなこと、ともかくすごく高い。船だと40日かかったそうである。モスクワに着くと可愛いロシア人の女性が迎えに来て、秀麿さんはどこかへ消えていって2日ばかり帰ってこず、ホテルのロビーで2晩待たされた。

ドイツからイタリアへ、高名な音楽家との交流、戦前のアメリカでのレコーディング、「オペラ」を日本に持って帰れとの秀麿さんの命令。一人で? どうやって? 

2・26事件の頃は楽曲に「愛」だとか「恋」だとかの題名はすでに規制されるようになっていたのだとか。ダメな国だったんですね。終戦直後の京都のコンサート、資金に困っていたらGHQの担当者が米兵のためのコンサートを依頼。会場はガラガラだったのに定員分のチケット代を支払って援助してくれた話。

101歳でも年に10回はイタリアに行っているタフさ(イタリアにも家があるのだそうだが)、絶えることのない好奇心。真にグローバルな視点。音楽好きには是非読んで欲しい。因みにラフマニノフは銀行員みたいな人だったのだそうだ。わかるような気がする。


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