2013年8月12日月曜日

満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史⑤


満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書) 』加藤陽子、岩波新書

きちんとカウントしたわけではないが、この本が戦間期のまともな本を読んでいて一番引用の多い本ではないだろうか。満州問題であれば『キメラ―満洲国の肖像 (中公新書) 』である。

アマゾンの書評にもあるように、戦間期の基本的な流れを知らずにこの本を読むのは少々辛いだろうと思う。山川の『もういちど読む山川日本近代史』ぐらいを読んでおくと、ちょうど疑問に思ったポイントの深堀りができるのではないだろうか。

例えばいかなる理由で関東軍幕僚達は満蒙領有論を抱くようになったのか、石原莞爾の構想だけに頼るのでは不足だ。日露戦争以降の政治外交的には安定した満州経営の何が変わったのか。あるいは満蒙における日本の特殊権益とは何だったのか。ここでは3つの前提の崩壊が指摘されている。

その他にも満鉄警備用の戦力はそもそも条約で認められたものだったのか、というような基本的な問題は私自身も知らなかったし、当時の人達も既成の事として慮外の事であったのには少々驚かされた。と同時にさもありなんとも思った。

さらによくTV等で放映されるために、国際連盟脱退時の松岡洋右の演説は、私なども松岡のスタンドプレーかと認識していたが、実際には松岡は連盟脱退に至らぬように相当の努力していたことなども指摘されている。

つまりだ、この時期はメッシュを細かくして詳細を詰めていくと、全く違ったものが見えるほど複雑であることをあらためてめて認識させる本だと思う。

それにもう一つ感想がある。例えば高橋財政の本を読んでも、その前後に物凄く大きな外交上の事件が発生していることをついつい忘れがちだが、景気の悪さは様々な事象と連動している。例えば金輸出再禁止は1931年12月13日だが、日本は満州事変の真最中、日本軍がWW1後、世界初の都市爆撃(錦州)を敢行したのが同年10月8日。17日は十月事件、24日には国際連盟理事会は日本に対して撤兵勧告案を13対1で決定してる。そして第1次上海事変が32年1月28日なのである。

満州を描いた山室氏の『キメラ―満洲国の肖像 (中公新書) 』、その前提である同氏の『複合戦争と総力戦の断層―日本にとっての第一次世界大戦 (レクチャー第一次世界大戦を考える) 』、江口氏の『新版 十五年戦争小史 』、松元氏の『「持たざる国」への道 - 「あの戦争」と大日本帝国の破綻 (中公文庫) 』、EHカーの『危機の二十年――理想と現実 (岩波文庫) 』、エドワード・ミラーの『オレンジ計画―アメリカの対日侵攻50年戦略 』その他もろもろ、と読み進めてきたけれども、ここからはもう少し深掘りした専門書を読んでいこうと思う。もちろん僕の場合、回転軸は金融・財政においておこうと考えているので、リース・ロスやあるいは、それ以前の米国主導の中国の銀本位制度、新四ヶ国借款辺りから始めるつもりだ。実はもう関連本は購入済みで山のように積んである。とりあえずは三谷太一郎『ウォール・ストリートと極東―政治における国際金融資本 』東京大学出版会から始めるつもりだ。


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