2013年8月13日火曜日

『秘話 陸軍登戸研究所の青春』


秘話 陸軍登戸研究所の青春 (講談社文庫) 』新多昭二

この本は陸軍登戸研究所関係の本を探していた時に入手しておいた本で、昨夜から読み始めた。

目次を見ると全部で時代順に六章あり、第一章が「登戸研究所の思い出」となっているので一章分だけ読めばいいなと思っていたのだが、気がつけばよほど面白かったのだろう、第六章「高度成長期を駆け抜ける」まで読了してしまった。

残念ながら登戸研究所関係の記述は限られているのだが、その他の観察が優れて面白い。例えば日米開戦が近づくと、著者の通う京都の中学校では英語教育が盛んになったそうだ。理由は南方など日本の将来の占領地区では英語が話せないと植民地管理ができないので、中学校レベルでは英語が重要だというのだ。著者が先生に「新聞に、英語は敵性言語だから使わないようにすべきだ、という人の意見が出ていましたよ」と先生にいうと、「それは脳味噌が粗雑な連中のいうことだ」と一蹴されている。

また開戦劈頭のシンガポール陥落の頃、ラジオ番組の解説で「日本はもう資源に困ることはない」とまことしやかに話している人もいたようだ。著者は色々な物や事象にたいする好奇心が人一倍強いので独特の観察眼で当時のことを解説してくれるのだ。徴兵制強化の様子も時系列でわかりやすいし、戦後の預金封鎖の説明もわかりやすい。というわけで最後まで楽しく読んでしまったのだった。

古代ローマのカエサルはルビコン川を渡る時「賽は投げられた」といったという。著者がいうに原語のラテン語では「Jacta alea est(ジャクタ・アレア・エスト)」、これを直訳すると単に「もう後には引けない」だそうでサイコロのほうは邦訳時の意訳なのだそうだ。う~ん。これは果たして名訳なのだろうか?お芝居にはいいかもしれませんね。



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