2013年8月16日金曜日

『上海―多国籍都市の百年』榎本泰子


上海 - 多国籍都市の百年 (中公新書) 』榎本泰子

戦間期の中国の状況を知りたくて、取り敢えず選んでみた1冊だ。2009年11月25日発行なので10年5月からの上海国際博覧会を意識した出版だったのだろう。

この本はアヘン戦争(1840~1842)後の南京条約によって開港させられた上海租界の歴史を、それに関わる主な民族別に縦割りし、中華人民共和国によって共産化されるまでを記述したものだ。

とても読み易くわくわくしながら読み終えた。

目次は以下の「」のようになっている。最初に租界を造った「イギリス人の野望」から始まり、第1次世界大戦以降経済的に伸長し、映画やジャズなど文化的にも大きく影響を与えた「アメリカ人の情熱」。この戦争とロシア革命において行き場のなくなった白系ロシア人達「ロシア人の悲哀」。共産主義から逃げてきた彼らは、やがて中華人民共和国によって再び共産主義に追われることになる。

後発組先進国「日本人の挑戦」、内山完造と魯迅の逸話、やがて占領者としての日本人、8月10日に日本がポツダム宣言を受諾すると噂が出た時点で、横暴な支配者として振る舞った一人の日本人官吏がユダヤ人達に囲まれ殴られた、その男は敬礼の姿勢で「ソーリー、ソーリー」と言って殴られていたのだそうだ。

そしてナチから逃れた「ユダヤ人の苦悩」、アメリカが移民を誰でも受け入れてくれたわけではない。ユダヤ人にとってのイスラエル建国の意味をあらためて知らされた。

そして最後が本来の住人である「中国人の意志」である。著者は音楽比較文化の専門家、日本人ダンサーに中国人バイオリニスト、上海で花咲いたオペラやオーケストラからジャズまで話題を交えながら読者を飽きさせることがない。また出典を丁寧につけてくれているので読みたい本が一気に増えてしまった。服部良一、中川牧三、和田妙子。

戦間期中国の特殊な場所である「上海」。その特殊さこそが当時の中国と国際社会の関わりをわかり易く教えてくれるのだ。

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