2013年8月20日火曜日

小説『月下上海』山口恵以子


月下上海 』山口恵以子 文藝春秋社

本作は第20回松本清張賞受賞、「受賞者は食堂のおばちゃん」と、新聞・テレビで盛んに取り上げられた山口恵以子さん。今年6月22日の発売である。今回はキンドル版で読ませて頂いた。フォントの大きさの調整ができるので老眼の読者にはありがたい。用事の合間に読んで1日で読めた。5時間ぐらいかな。

今の僕は戦間期の上海情報が読書の目的となっているが、この本は昭和17年、つまり太平洋戦争もたけなわ、というよりも早くも行き詰まり始めた頃から戦後の少しの時期までがカバーされているサスペンス・ラブ・ロマンスだ。

最初は「大人の少女漫画家」という印象を受けたが、さすがに受賞作家。話にぐいぐいと引き込まれていく。特殊な才能だ。当時の上海の様子も仔細にわたるがくどくない。実によく調べてあるという印象である。ものすごく参考になった。「読み始めたら止まらない」と文藝春秋社の紹介には書いてあるが、まさにそのとおり。よく考えたら僕はがっちりとした骨格を持つ少女漫画を嫌いではなかった。

ヒロインがアラフォー、大人の恋愛に目覚めていつしか好きになってしまう男が56歳。なんだかひとごとでは無い設定なのも興味をもたらすし、アラフォーの女性が望む大人の50代に自分はなりきれているのか反省を促される。こういう読後感を持たせる以上本作はやはりラブ・ロマンスなのだ。ごたごた言わずに一言でいうならば「面白かった」。作者の意図もそうなんだろうと思う。


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