2013年8月22日木曜日

『上海ラプソディ―』和田妙子


上海ラプソディー―伝説の舞姫マヌエラ自伝 』和田妙子 ワック株式会社

日中戦争から太平洋戦争中の上海租界で、スパニッシュ舞踊の伝説の舞姫だった「マヌエラ」こと和田妙子の自伝。我々に身近なところでは、まだお腹の中のミッキー・カーチスも登場する(身近じゃないって?)。実に波瀾万丈な生涯である。

この自伝を読む前に佐野眞一『上海時間旅行―蘇る“オールド上海”の記憶 』(山川出版)を読んでおいて、さらにこれまで読んだ榎本泰子『上海』(中公新書)の知識と、中川牧三『101歳の人生』(講談社)、山口恵似子の小説『月下上海』(文藝春秋)を下地として読み始めたから、僕としては文字の上とは言え、すでに土地勘はかなりあった。

こうした自伝を読むと、あまり一般書では扱われていないような生活に密着した疑問点が出てくる。調べればわかることなのだが、言われなければ気がつかない。例えば通貨は、日本円、軍票、USドル、蒋介石中国の法幣、英ポンド、汪兆銘傀儡政権の儲備券、そして上海ドルが入り混じっていた。もちろん金の延べ棒も大活躍している。1USドル=21上海ドル。上海ドルは未だ記述された文章を見つけていないが、多分共同租界工部局が発行していた通貨だと思う。

太平洋戦争開戦前は、日本租界の一般の日本人は英米による共同租界とフランス租界(実質は白系ロシア人と裕福なユダヤ人)には近づけなかった。日本人は中国人からも西洋人からも嫌われていたし、堂々と人種差別が行われていたのである。マヌエラは日本人の国籍を伏せてアメリカ人マネージャーの助力で共同租界とフランス租界で大活躍したのだった。

このマネージャーも、そして大戦開戦後に彼女を助けて後に結ばれるやたらと金まわりの良いW氏も、他の本によるとどちらもスパイなのだそうだ。もちろん彼女は人から指摘されるまでは知らなかった。この周辺はノンフィクションで面白い本が多数出版されている。

一方でクラッシックの中川さんとは交流が無かったようだ。彼女が自伝の中でしきりほめているバレーやオーケストラは日本人がサポートをしていたことを知らなかったようなのだ。 本土の日本人が芋のつるを食べていた時に、上海ではどんな食材でも入手できて、毎夜高級シャンパンを抜きまくっていたのだ。


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