2013年8月5日月曜日

『持たざる国への道―あの戦争と大日本帝国の破綻』読書感想文


松元崇さんの『「持たざる国」への道 - 「あの戦争」と大日本帝国の破綻 (中公文庫) 』(2013/7/25刊)を読んだ。この本は2010年8月大蔵財務協会から発売された『高橋是清暗殺後の日本―持たざる国への道』の改訂版である。後者はすでに入手困難な本となり高いプレミアムがついていたので、一般の読者にはありがたい事だ。両者の比較では後者にあった第3部「明治憲法下の義務教育」が割愛され、全体の項目も変更が加えられている。いくつかの項目を読み比べてみたが、著者は多分全体を読み直し修正を加える作業をされたのだと思う。結構書きなおされている。

著者の松元崇さんはwikiによると飛び抜けのエリート財務官僚で現在も内閣府事務次官という要職にある。バリバリの現役官僚でありながら書をよく読み、『大恐慌を駆け抜けた男―高橋是清』、『山縣有朋の挫折――誰がための地方自治改革』を出版されている。私が『日露戦争、資金調達の戦い』を書いた折にも参考資料としておおいに活用させていただいた。

前置きが長くなったが上記の著者情報は大事だと思う。著者は財政のトップ・プロフェッショナルである。

私が『日露戦争~』を書いて以降、日中戦争から第2次世界大戦にかけての軍費や資金調達に関連した本を書いてくれとのリクエストを随分頂戴したが、その答えはこの松元さんの『持たざる国への道』の中にある。

高橋財政で好調だった日本経済は2・26事件とその翌年に発生した日華事変によって行き詰まっていく。占領地に傀儡政権をつくり、そこで採用した円元パー政策が中国人による裁定取引の対象となった話はよく知られているところだが、こうした軍部による経済原理を理解しない満州経営や華北経営が日本経済を次第にジリ貧に追いやり、ついには「持たざる国」としてしまう。そして国民はこの事実に気がつかず、窮乏を英米の対日政策のせいだと勘違いし、皮肉にも軍部を支持していくという間違いに陥いらせたのである。生半可では読めない本だが、「あの戦争」の戦費に対する疑問には答えてくれだろう。何よりわずか860円でこれほどの情報が買えるとは驚きである。


0 件のコメント: