2013年8月31日土曜日

「朝鮮銀行―ある円通貨圏の興亡」多田井喜生


朝鮮銀行―ある円通貨圏の興亡 (PHP新書) 」多田井喜生を読んだ。

多田井氏は元日本債券銀行の出身、同行の前身である朝鮮銀行の歴史調査を行う中で『朝鮮銀行史』東洋経済新報社、『大陸に渡った円の興亡、上下』(東洋経済新報社)など名著を残している。『朝鮮銀行史』をコンパクトにまとめたこの新書も内容はぎっしりと詰まっている。

多田井氏はその著作よりもむしろ2011年にNHKで放映された『圓(えん)の戦争』の方が有名かもしれない。満州事変から始まり日中戦争、太平洋戦争と日本はいかに軍資金を調達したのかの特集番組である。多田井氏はこの番組に登場して日本の軍資金捻出の秘密である「預け合」の説明をしている。

今年の春頃、週刊エコノミスト誌の編集者とお話をした時に多田井さんがお亡くなりになったことを聞いた。僕がもう少し早く一人前の作家になっていればお話を聞けたのにと残念でならなかった。

さて、NHKの番組を観た人は果たして「預け合」を理解できたのだろうか?実は、僕にはとうていそうは思えないのだ。今回、NHKオンデマンドでもう一度番組を観たが、番組で示された図ではとうてい理解できないはずだ。

多田井氏の著作群は、限りなく価値の高い名著であるが、元号と西暦が混在し、前後が交錯する傾向がある。新書なのに電車の中でついでに読むことは不可能なのである。

それと、多田井氏の本では扱っていないが、日中戦争の戦費が絡む話では「アヘン」の問題をどう扱うかというのは重大なテーマではないかと思う。もちろん不用意にこのテーマを扱うとアカデミックには辛いのかもしれないが、江口圭一さんの本は執拗に扱っている。このあたりももう少し勉強しておきたいと思っている。

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