2013年10月6日日曜日

『第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち』


ベストセラー『大国の興亡』の著者である、ポール・ケネディが書いた『第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち 』を読んだ。こうした本はたいていの場合原題の方が本の内容がわかりやすい。”Engineers of Victory”が原題で、勝利に貢献した技術者達の話である。

戦勝の理由とは、例えば連合軍がドイツの有名なエニグマ暗号(英:ウルトラ)の解読に成功したことから終戦が3年早くなったというようには、因果関係を単純化することは適切ではない。そこには様々なテクノロジーの技術達成による複合的な要因があり、こうした貢献は英雄だけではなく組織のミドル層による達成にあったのだと主張する本である。つまり目立ちはしないが技術的革新を達成した地味な人たちに焦点をあてた本である。

テーマは5つあり、1)大西洋のロジスティック確保であり、Uボートの脅威の克服である。2)バトル・オブ・ブリテンから対ルフトバッフェ戦闘機部隊の克服。3)地空共同のドイツ軍電撃戦をいかに克服したか。4)ノルマンディー上陸作戦に関する技術的課題の克服。5)海軍建設大隊による南太平洋作戦の技術的課題の克服。からなっている。いずれも興味深いテーマである。

2)のケースの一部を紹介すると、1939年に始まった第2次世界大戦も、開戦4年目の43年に入ると様々な技術が達成されるようになったという仮説に対する根拠の一環として。例えばレシプロ戦闘機(プロペラ推進)の技術的最高峰であるP51ムスタング戦闘機の誕生場合がある。P51は当初英国空軍の依頼によって40年に米国ノースアメリカン社で設計が開始されたのだが、当初は米国GM系列のアリソン社のエンジンを積載していた。実際に戦闘に參加していないという状況は兵器の開発においても真剣味が相当に違うようで、当時のアメリカにはヨーロッパ水準の戦闘機が無かったのだそうだ。つまり当時のアメリカのP40程度では高性能のロールス・ロイス・エンジンのスピットファィヤやメルセデス・ベンツのメッサーシュミットにはとても対抗できなかった。GMのアリソン・エンジンは低性能だったのだ。

ところが送られてきたアリソンP51にたまたまロースルス・ロイスと関係のあるテスト・パイロットが搭乗し、エンジンを換装するとよいかもしれないと閃いて、色々とネマワシをしてロールス・ロイスのマリーン・エンジンを搭載してみると、これがとんでもない高性能機に変貌したのである。

エンジン換装後のP51はスピットファイアよりも機体重量が重いにもかかわらず燃費が良かった。また速度が早い上に燃料タンクを効率的に設置できる機体構造上の特質を持っていたために、長い航続距離が確保でき、爆撃隊の護衛戦闘機として理想的な機体となった。これが大きかった。当時は「頭上の敵機」でお馴染みの長距離ドイツ爆撃による爆撃隊大消耗の真最中であって、航続距離の関係で護衛戦闘機が同伴できないことが最大の問題点となっていた。そこでこのひらめきは連合軍による護衛付の長距離爆撃を容易にし、戦況に大きく影響をおよぼすことになった。

同じように同時期には船舶用各種レーダーが小型化され航空機や小型フリーゲートにまで搭載されるようになってドイツ軍のUボートを無力化した。Uボートの無力化が米国からの物資輸送をスムーズにして、航空機の保守部品維持など様々な問題点をクリアしていく原動力となる。そしてそれは欧州戦線の負担をやわらげ太平洋に力をシフトしていくける要因ともなっていく。イノベーションはかたまって発生しているのだ。これは戦中の技術的イノベーションの話である。

しかし43年というのはアメリカが41年12月に参戦してから2年目。本格的に予算を投入してから、プロジェクトが実るまでの話でもあるのだ。


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