2013年10月10日木曜日

『近代中国史 (ちくま新書) 』岡本隆司


近代中国史 (ちくま新書) 』岡本隆司

久々に人に是非読んで欲しいと薦めたくなった1冊。本としてすごくよく出来ている。

戦間期の日本とそれを取り巻くグローバルな状況を勉強していると、多くの書籍があるにもかかわらず、どうしても理解し難いのが満州を含む中国の状況である。

日清戦争を戦い下関条約のネゴシエーターでもあった李鴻章は清國のどのような立場の人間であるのか?

満州の張作霖は軍閥というが何故そんな閥があるのか?

辛亥革命によって清朝は滅亡したにも関わらず何故革命の成果が中国全土に及ばないのか?

日本は中国軍を圧倒したはずなのに何故蒋介石は重慶政府で維持しえたのか?

中国の持つ統治システムは我々が教科書から学んだ近代日本や、西洋的なものとは全く異質なのである。しかし異質なことは常々理解できてはいたものの、それが原理としてどのように異質であるのかを上手く説明したものがこれまでは無かったと思う。

この本は「唐宋変革」から始まり、科挙において特定の地位を獲得した一握りのエリートである「士」とその他の「庶」という階層構成が形成されたことを解説し、中央政府の統治は「士」のみ相手に行われ、「庶」は対象とはされなかった構造などを清国租税収入などから解き明かしていく。この構造は現代中国の一部の国営企業の納税が税収のほとんどを占めている状況や、都市の共産党幹部の大金持ちと今なお大多数を占める地方の貧民とのあきれるほど大きな経済格差の説明にも敷衍されるのである。

また金融史的には中国は昔から銀とのかかわりが強く、近代においても銀本位制度を採り続けたために、商品としての銀価格の変動に翻弄される姿や、地方は銅銭経済(銀銭二貨制)であったことから金銀比価の問題だけではなく、対銅価格の変動にも大きく影響を受けていたことなども説明されいて、金融関係者にとっては非常に興味深いところである。

中国関係の一般向け書籍はたくさん出版されているが、そうした本を読む前に取り敢えず読んでおきたい一冊である。






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