2013年10月31日木曜日

大正の男 川上哲治


朝刊各紙の一面コラムは川上哲治さんへの追悼記事となっている。その中ではさすがは本家、読売の「編集手帳」が面白かった。西鉄の鉄腕稲尾投手が新人で日本シリーズにおいて初めて川上選手と対峙した時に、ついつい帽子をとってマウンドから2、3歩下り「よろしくおねがいします」と挨拶してしまったという話。川上選手が神様だったことがよくわかる逸話だ。

僕個人にとっての川上さんは、実はアニメ「巨人の星」のイメージのほうが実物よりも格段に強い。元巨人軍幻の3塁手である父星一徹が小さい飛雄馬に許した数少ない遊びのひとつに、長屋の壁に開いた小さな穴から外ににある木にボールをぶつけてまた同じ穴から部屋の中にもどして一人でキャッチボールをするというものがある。これはコントロールはいうまでもなく、相当に強い力で投げる必要がある。というか、物理学的にはもちろん不可能なんだろうけれども、ともかく飛雄馬を探したずねてきた川上さんが長屋の外でこれを目撃することになる。「くゎ、凄い」と。何しろスリットを抜ける量子のようにニュートン物理学を超越しているのだから。そして川上さんはあろうことかこの球をバットで壁の小さい穴に打ち返すのである。ラクダが針の穴を抜けるかのように。何でそこにバットがあったのかは謎だし、聞くのは野暮である。

長屋の部屋の中では卓袱台を挟んで星一家はちょっとしたパニックになっていた。こんなことができるのは、世界広しといえども「巨人軍の川上哲治しかいない」と父一徹が目をむき外に飛び出すが、そこには川上さんの後ろ姿だけがあったとさ。空はあるいは夕日に染まっていたのかもしれない。

各紙とも川上さんを昭和の人と書いている。1920年生まれといえば大正9年。僕の母親にいわせればこの年代の人は「大正の男」というのだそうだ。昭和男との違いは家ではよく着物をきていることだと。そういえば僕の亡くなったオヤジもそうだった。

ご冥福をお祈りします。

Porco

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