2013年10月6日日曜日

『太平洋の試練 真珠湾からミッドウェーまで上下』


アメリカではかなり話題となった本である。イアン・トールの『太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上 下』を読んだ。第2次世界大戦関連は映画、ノンフィクションとももれなく読んでいるつもりなので、大枠ではまったく新しい知見というものはとりたてて無いのだが、日本が開戦に至る経緯から真珠湾、チャーチルの葛藤、ドーリットル、珊瑚海、ミッドウェーと一連の物語に紡ぎ直したところに価値がある。

拙著『日露戦争、資金調達の戦い: 高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書) 』ではネットで20世紀初頭のタイムズが書斎で読め、当時のロンドン市場の日本公債価格の日足やその他の英文一次資料に直接アクセスできたことが本をこれまでにないユニークなものにしたが、この本もネットがなければ書けていない本だと思う。それだけに以前では考えられない柔軟なネットワークが活用され、つまり各国専門家の知見にアクセスして、これまでにないより公正でより正確な歴史書を書き上げられたのだと思う。細かい訳の不都合や間違いは改訂版で直せば済む程度のものであり、ミリタリー・オタクから見れば不満があるのかもしれないが、クオリティは高いと思う。

さて、大枠ではないところに、日本人にとって考えさせられるサブジェクトが準備されている。ひとつは『坂の上の雲』の秋山真之でお馴染みの世界中の海軍のバイブルであるマハンの『海上権力史論』の日本帝国海軍ドクトリンに与えた影響である。この本のようにすべての始まりに取り上げられるとこれまでのうかつさに考え直さざるを得ない。1冊本が書けるのではないだろうか。ふたつ目は、あまり触れたくはないのかしれないが名将山本五十六の再評価である。どうしてかというのは是非同書を読んで欲しいと思う。エンターテイメントとしても面白く読めるだろう。

米国出版時のWSJの書評は「われわれが負け犬だった時」。しかしこれはアメリカが不意打ちを食らって日本との戰爭を準備していなかった空白の時間の優位の話でしかない。

1940年法とそれの改訂であるTwo-Ocean Navy Act
航空母艦7隻、駆逐艦115隻、潜水艦43隻など合計133万トン(7割増)の艦艇建造、15、000機の航空機製造. これは帝国海軍(147万トン)と同じ規模分を当時の現状戦力に上乗せするというもの。

1941年12月、
ルーズベルト大統領は真珠湾攻撃後、上記にさらに上乗せして空母8隻、巡洋艦24隻、駆逐艦102隻、潜水艦54隻の建造を承認。

1942年1月、
海軍将官会議はルーズベルト案でも物たりぬと、戦艦34隻、空母24隻、巡洋戦艦12隻、巡洋艦104隻、駆逐艦379隻、潜水艦207隻の艦隊を構想。

彼我の戦力差(経済力の差)は最初から話にならなかった。

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