2014年2月27日木曜日

『金融の世界史』重版決定


『金融の世界史』重版決定しました。これで5刷りです。
未だの方は是非読んで下さい。


2014年2月26日水曜日

『仕事に効く 教養としての「世界史」』


出口治明さんの新著『仕事に効く 教養としての「世界史」』を読了しました。ツボに入ったようで、あまりに面白いので一気読みでした。これから世界史の本をたくさん読もうとする人が事前に読むには最適です。もちろん僕のように色々読んだけれど、もうひとつスッキリしないような人にも良いでしょう。キリスト教の歴史やフランスやドイツ、イギリスの成立など日本人にわかりにくい基礎的な部分を興味を切らさないように面白く解説してくれています。

西洋と東洋の画期について、本書ではアンガス・マディソンのGDPを使ってアヘン戦争においていらっしゃいますが、私としては一人あたりGDPの推移を比較した上で、やはり画期を1500年前後におく見解も捨てがたいと思います。色々と思考させても下さいました。

自分でここまでまとめ上げるためには一体何冊読まなければならないか、この本は読めば(知的に)得した気分になれますよ。



追記:2月27日
西洋と東洋の乖離の画期について何を言っているのかわからないとの指摘もあったので。少し説明しておく。

東洋の没落と西洋の勃興の分水嶺の話だ。GDPシェアからみるとアヘン戦争が分水嶺だというのが本書。もちろんそのとおり。グラフはアンガス・マディソンのGDPデータのうち1600年以降の実数値。1840年のアヘン戦争とそれ以降の列強の侵食が中国経済を疲弊させた様子がわかる。そして西洋の国々がサイズでキャッチアップしようとしている。西が東をGDPシェアで逆転した。当時アメリカが物凄い勢いで成長していることにも注意が必要だ。



一方でもう少し長いスパンで今度は一人あたりGDPのデータをみると、洋の東西を問わず人類は15世紀くらいまでたいして成長してはいない。千年前と同じものを食べ同じような生活をしていた。ところがこれが大きく変化するのが大航海時代。しかも西洋だけが急成長しはじめたのだ。分水嶺としてはこれもありでしょという話。







2014年2月25日火曜日

『日本軍と日本兵ー米軍報告書は語る』を読んで


僕ぐらいの年齢になると久しぶりに写真の中に見つけた自分の姿に、こんなに老けていたのかと驚かされることがある。また録音された音声もまるで別人のように変な声に聞こえることもある。

家の中でブツブツと「自分は正しい」とひとりごとを言っていても近所の人は誰も認めてくれないように、歴史的真実もひとりよがりでは真実たり得ない。

ショート深く飛んだ内野ゴロがファースト・ベースを駆け抜ける打者にとっては間違いなくセーフであっても、送球を受け取ったファースト・ベースマンにとっては天地神明に誓ってアウトだったりする。物事や事象はいろいろな角度から確認すべきものなのだ。

日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書) 』一ノ瀬俊也著を読んだ。

この本は何故今頃とも言える本だが、第2次世界大戦において米軍は日本兵をどのように見ていたのか、当時米軍の中で情報共有のためにほぼ毎月将校向けに配布されていた戦訓広報誌(IB:Intelligence Bulletin)に描かれた日本兵の姿を解明していこうというものだ。

果たして日本兵は「バンザイ突撃」によって玉砕を繰り返すばかりの戦備劣弱、無能の集団だったのだろうか?

硫黄島において効果を見せたトンネル作戦はいつごろから始まったのか?

軍の広報誌であるからバイアスがかかっているに違いない、ある時は憎しみを煽るために侮蔑し、ある時は用心のために日本兵を手強い相手として描く。

捕虜からの聴取では、アメリカ映画のファンが多いなど、さもありなんという話も書かれている。詳しく書くことは一応避けておくが興味深い1冊である。ボリュームは大くない。

2014年2月17日月曜日

週刊エコノミスト2月25日号


本日発売の週刊エコノミスト2月25日号

成毛真さんもTwitterで「週刊エコノミスト今週号の特集は『世界史に学ぶ経済』この号は永久保存版として絶対に買いですよ」と推奨しています。

僕もその中の特集「第1次世界大戦から100年」に『人口爆発、経済成長、軍拡 強大化で孤立したドイツ』を寄稿しています。原稿用紙11枚。週刊誌の記事としては大作でした。ダボス会議での安部首相の発言をWW1の故事から再考したものです。

今週号は倉都康之さんや平山賢一さん、萱野稔人さん、『砂糖の世界史』の川北稔さん、孫崎享さんのEHカー、出口治明さんのマクニール、私と同じ特集では『未完のファシズム』の片山杜秀さん、佐々木毅さんが『八月の砲声』を解説と(私以外は)超豪華メンバーとなっています。若い編集者が一生懸命に作っていました。お買い得ですよ。


【ビジネスアイコラム】第一次大戦から100年 司馬遼太郎の呪縛

【ビジネスアイコラム】第一次大戦から100年 司馬遼太郎の呪縛
2014.2.13 ビジネスアイ掲載

 最近は日露戦争の資金調達と当時のロンドン金融市場について講演する機会が増えた。『坂の上の雲』の根強い人気をみてもわかるが、日露戦争は日本が勝った戦争であるだけに今でも大変人気の高いコンテンツである。

 現代の金融市場のおおよその骨組みは金本位制によって為替が安定していた20世紀の初頭にはすでに完成されていた。高橋是清が奔走して国際金融市場で募債した外国国債によって日本は戦費を調達し日露戦争を戦った。日露戦争の成功譚はそこまでだ。実は積み上がった国家債務はその後の日本の財政をひどく圧迫することになったのだ。

 ところがその約10年後に欧州で第一次世界大戦が勃発したことによって日本の巨額の国家債務は救われることになる。「遠隔地の戦争景気」によって日本は欧州に物資を輸出するとともに、列強のいぬまにアジアの市場に進出し外貨を稼げたからである。また船舶需給の逼迫(ひっぱく)から海運は大もうけのビジネスとなり、日本にもにわか成金が大勢誕生することになった。また一方でこれもまた「遠隔地の戦争」であった米国は戦争で疲弊した英国から世界覇権を奪い取ったのである。

 今年は1914年の第一次世界大戦勃発からちょうど100年にあたる。私も含めたわれわれ日本人の第一次世界大戦に対する知見は日露戦争と比べると驚くほど浅薄である。当時ドイツの要塞があった青島を攻めたことぐらいは知っている人も多いが、ドイツ海軍の対Uボート戦用に地中海に護衛艦隊を派遣した話になるともうほとんど知る人は少ない。日本はこの時に今でも中国がその日を国恥記念日とする対華21カ条要求を突きつけ、また終戦の講和会議では世界五大国の一つとして世界の平和秩序に対する責任ある地位を委ねられた。しかしながら日露戦争後には多くの列強の士官らが勉強しにきた日本の世界最高水準だった戦争の技術も、航空機や戦車、潜水艦などの新兵器の登場によって一気に陳腐化してしまったのもまた第一次世界大戦なのである。

 司馬遼太郎が産経新聞に『坂の上の雲』を連載し始めたのが1968年。それから50年近くが経過しようとしているのに、われわれの知る歴史物語は日本海海戦の大勝利で停止してしまっているのかもしれない、その後は第一次世界大戦を飛ばしていきなり戦艦「大和」とゼロ戦なのである。司馬は日露戦争のその後を書くべく期待されたが、題材として主人公となるべき人物が見当たらないとして書かなかった。明治帝をはじめ西郷や山県。伊藤、大山巌らの特徴ある人材がいなくなり、政治家も軍人も人物として小粒でサラリーマン化してしまったというのだろうか。

 さて、われわれはあまりにも偉大な司馬遼太郎の呪縛からそろそろ解き放たれなければならない。100年目を迎える第一次世界大戦については今後4年ほどの間にシンポジウムが開かれさまざまな研究が発表されることになるだろう。それがきっかけになればと思う。
(作家 板谷敏彦)