2014年8月31日日曜日

めぐり逢わせのお弁当





ダッバーワーラーをご存じだろうか? これはインドのムンバイに現存する弁当配達サービスである。ビッグ・ビジネスである。英国植民地下のオフィスワーカーであったインド人は植民地事務所の提供する昼食をヒンドゥーやイスラムなど宗教上の禁忌からそのまま食べることができなかった。また低いカーストの人間が調理した食事も食べられなかった。そのために各家庭から昼食を配達するビジネスが発達したのだそうだ。毎日175,000個の弁当が各家庭から集められ、それぞれの勤務先に配達される。配達ミスは600万回に1度しかないという正確さで、ハーバード大でも研究対象とされ英国王室も見学にきたという100年も続くすごいシステムである。日本人からすれば弁当なぞ朝持っていけばよいじゃないかとも思えるが、、旦那の出勤後に奥様がしっかりとカレーを調理しているのである。

アナ雪以来久しぶりに映画を見た。それが上記のダッバーワーラーにまつわるインド映画「めぐり逢わせのお弁当」である。

まだ小学校低学年の子供がいる若妻。彼女の作ったお弁当が600万分の1の確率を乗り越えてご主人ではない人に配達された。配達された人は保険会社の査定人。1等車の定期で通勤する、多分インドでは一流の定年間際のサラリーマン。妻には先立たれて一人暮らし。死んだら妻の横に埋葬してくれるようにお願いしたら、ムンバイでは土地が少ないので縦に埋葬してはどうかと提案される。少し前までムンバイでも1等車ならば座れたが最近は立ったままがふえたのだそうで、死んだあとぐらいは横になりたいと切実である。

若妻のご主人は浮気をしてかまってくれない、2人は配達の間違いを放置してお弁当に手紙を忍ばせ文通を始めた。最初は他愛のない会話だったが2人はお互いを見たこともないのに次第に恋におちていくのだった。

初めて会う約束の日の朝、ネクタイを締めそり残しの髭にカミソリをあてると、バスルームに昔おじいさんが入浴した時のにおいがした。おじいさんがいるわけもなく、それはまぎれもなく初老の彼自身のにおいだった。また出かけの電車の中では親切な若者から席を譲られてしまう。

そして定年間際の初老の男はこう言うのだ。
「はずれだとわかった宝くじを買う人はいない」

彼と若妻がその後どうなったかはお楽しみだからここには書かない。
しかし2人の文通の中にブータンは世界で一番幸せな国だとか、そこへいけばルピーは5倍の価値を持つから引退後は行きたいとか、まるで今の日本の僕らと変わりない。この映画は文化の違いを乗り超えて世界中で違和感なく受け入れられるのではないかと思う。メールではなく手紙が媒体なのも興味深いし、演出が繊細で演技の間が素晴らしい。お約束の歌と踊りは今回はないが。間違いなくおすすめの恋愛映画である。


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