2014年9月4日木曜日

【ビジネスアイ・コラム】鉄道と地勢図― 高速鉄道開通を待つバルト3国


鉄道と地勢図

高速鉄道開通を待つバルト3国

来年3月に東京から金沢まで北陸新幹線が開業する。金沢までの所要時間は2時間30分。現在大阪から金沢までJR特急「サンダーバード」で約2時間40分ほどだから、鉄道の時間距離で見るならば東京の方がやや近くなる。

手元に昭和39年の時刻表があるが上野から金沢までの最速列車は、上野9時5分発信越線経由大阪行ディーゼル特急「白鳥」で、長野駅を午後12時27分、直江津で青森から来る同じ名前の「白鳥」号と連結して金沢着は午後17時01分。約8時間である。逆向きに大阪発8時15分の「白鳥」号は金沢に11時34分到着。所要時間は3時間20分ほどだから当時は大阪からならば日帰りも可能だった。

文化圏の形成は時間距離が大きな要素だ。例外もあるが日本海側の出汁は北海道と大阪を結ぶ北前船の経路の影響で昆布出汁が多い。秋田や富山、金沢料理も昆布が基本の薄味である。一方で江戸は黒潮の経路で薩摩や土佐の鰹節、紀伊半島や房総、銚子の濃い口醤油でうどん出汁は濃い。

しかしほくほく線の開通ですでに東京―金沢間の時間距離が短くなっていたとはいえ、北陸新幹線の開通は富山や金沢の関西経済・文化圏からの完全な離脱を意味するようにも映る。東京への一極集中である。沿線の都市の利便性から見ればこのほうがよいのであろうが、東日本大震災時に見せた国家としてのリスク分散管理の見地からはもう少し考慮が必要なのかもしれない。


さて、ロシアである。世界の鉄道の線路の幅の標準は1435㎜である。これを標準軌という。蒸気機関車を広めたスティーブンソン社の機関車がこの軌間であったために初期にこれを輸入したアメリカ、フランスやドイツなど欧州の主要国はこの軌間を採用したので標準となった。新幹線は標準軌。JR在来線は植民地ゲージと呼ばれる1067㎜の狭軌である。明治維新政府は資金がなかった。

一方でロシアはドイツや当時のオーストリアから鉄道によって侵攻されるのを防ぐためにわざわざ1520㎜の広軌を採用して敵の車両の乗り入れを妨害した。日露戦争のおりには日本陸軍鉄道大隊がわざわざ広軌を狭軌に直しながら(改軌)進軍した。狭軌の機関車しか保有していなかったからである。

そして戦後には南満州鉄道のために当時の中国の規格である標準軌に再び改軌したのである。当時シベリア鉄道で日本から欧州に旅をするにはハルビンで一度広軌の列車に乗り換えてシベリアを横断し、ポーランドで再び標準軌の列車に乗り換える必要があった。

ウクライナは今でも殆どがロシア規格の広軌である。同じくロシアと隣接する旧ソ連バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)も広軌だが、現在はEU諸国と標準軌による高速鉄道の延伸に力を注いでいるそうだ。ウクライナ危機がこれを加速している。3国は鉄道によって経済圏、文化圏を変更したいのである。

板谷敏彦

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