2014年10月20日月曜日

【ビジネスアイコラム】国産ウイスキーの価格競争力


【ビジネスアイコラム】国産ウイスキーの価格競争力 

2014.10.20

NHK朝の連続テレビ小説新シリーズ「マッサン」が高い視聴率を稼いでいるそうだ。「マッサン」とは、スコットランドに留学してウイスキー製造技術を日本に持ち帰った竹鶴政孝氏がモデルである。彼はサントリー山崎蒸留所の初代工場長であり、後にニッカウヰスキーの創業者となった。

その「マッサン」が1924年に製造を開始してから90年が経過して、今や日本のウイスキーは本場のスコットランドやアイルランド、カナダ、米国と並んで世界5大ウイスキーとして数えられるようになった。生産量だけでなく、その品質がとても高く評価されている。

昔の話で恐縮だが、輸入ウイスキーの関税が撤廃される前、あるいは円がこれほど強くなる以前は、海外旅行のお土産といえば高級ブランデーやウイスキーが定番だった。

本の型をした陶器に入れられたナポレオン・ブックが免税店では1万円強から、これを日本で買えば5万円だとよく自慢気に聞かされた。洋酒は内外価格差の激しい商品だったのだ。これは国産ウイスキーの保護だけでなく、日本酒やその他の焼酎などの保護も目的だった。

80年代初めには、スタンダードウイスキーと呼ばれる7年物のジョニー・ウォーカー赤ラベルが5000円、12年物の黒ラベルが1万円。さらに高級なオールドパーが1万5000円だった。

最近はすっかり聞かなくなったが、当時の企業によるお得意さまや関係官庁への年末年始の贈答も区切りの良い値段でランク付けが明瞭だった。カローラがコロナになり、やがてクラウンになるように出世に応じてお酒もランクアップしていった時代である。

一方で当時のベストセラーであるサントリー・オールドが約2300円、特級の角瓶が1800円、一級のホワイトが1000円で二級のレッドが500円だったと記憶している。ニッカも同様のランクアップだった。トリスはさらに安かった。

さて、スーパーマーケットや量販店の店頭で今、これらの価格をチェックしてみると、国産ウイスキーの価格が当時とあまり変わらない一方で、7年物スタンダードの正規輸入スコッチは1000円を、12年物では2000円を切るものもある。輸入ウイスキーの価格は諸物価が上昇している中、35年前に比べ何と5分の1にまで低下しているのである。

国産ウイスキーは高関税に守られている間に健全に育まれ、やがて競争力を持つ世界商品へと進化・発展を遂げた保護政策の成功例として受け止めればよいのであろうか。あるいはわれわれの通貨である「円」が英ポンドに対して日本人の購買力を大いに高めた結果なのであろうか。もしくは、われわれ酔っ払いは輸入ウイスキーに対して単に払いすぎていただけの話なのだろうか。ここは一つじっくりと飲んで考えた方がよさそうだ。

作家・板谷敏彦