2015年4月14日火曜日

【高論卓説】EUと違う状況、参加に慎重な判断を


フジサンケイ・ビジネスアイ 4月14日号

【高論卓説】EUと違う状況、参加に慎重な判断を

 日本のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加の是非をめぐって議論が活発になっている。先月12日に英国が参加表明をした後でEUの主要国やロシア、韓国までが雪崩のように後を追って参加したために、わが国が参加しなかったことは政府の失策だと責める向きもある。だが、私は現状がそれほど悪いとは思わない。皆が参加したから参加するという選択はまっとうだし、ここは一息ついて慎重に損得計算をすればよい。

 AIIBは中国の国家政策である「一帯一路」と結びつけられる。これは陸の「シルクロード経済帯」と「21世紀海上シルクロード」の2つからなるユーラシア大陸を横断する壮大な構想で、中国政府は「シルクロード基金」を募ってこの広大な地域の基礎インフラ、資源開発、産業協力を遂行する原資とする。AIIBはここに融資するという流れである。融資であるからには常にリスクを伴うであろう、わが国が国内総生産(GDP)の規模による出資比率を求められるならば、参加は巨額な投資となるので安易に飛びつく必要はない。

 なぜならば(1)日本はアジア開発銀行を通じて既に中国に債権がある、つまり同種の資産配分を保有している(2)中国の公的債務は積み上がって、現状は先行きの不透明感が増している、つまり中国は新興国開発プロジェクトの資産管理能力が特に高いわけではない(3)設立の趣旨に中国の高成長を担ってきたインフラ過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓の側面がある。つまり中国主導の開発計画では自国企業を優先し、わが国に出資分に応じた見返りがあるかが疑わしかったからである。

 このうち(2)と(3)に関しては英国をはじめとする欧州連合(EU)各国の参加によってAIIBのガバナンスが想定よりも改善される可能性が出てきた。従って皆が参加するから日本も参加するというロジックはまっとうなのである。それでも(1)については依然としてわが国は雪崩を打って参加したEU諸国とは別の要因を抱えているということである。慎重であってしかるべきだ。

 一方で経済的な判断とは別に中国が掲げる「一路一帯」構想は百数十年前に米国海軍のマハン大佐が提示した「海上覇権」の概念と、マッキンダーのいうユーラシア大陸を制覇する「ハートランド」を連想させる点では、地政学的で壮大なアイデアである。日本の昨今の思潮の右傾化も、中国がGDPで日本を抜き去るというような中国経済の伸長による圧迫感と無縁ではないだろうから、中国による世界覇権の奪取をほうふつさせる「一路一帯」は日本人にとって刺激的にちがいない。

 しかしこれもあまり感情に流される必要はない。いまだに世界の防衛支出の半分はアメリカが支払っている。財政面で中国が21世紀海上シルクロードを軍事的にコントロールすることは現実的ではないのだ。むしろわれわれは中国海軍の守備範囲が拡大することによって東シナ海への戦力配分が相対的に低下することを冷静に見守るべきだろう。


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