2015年9月2日水曜日

『日本人のための第1次世界大戦史』 第11回は「メディア史」です


週刊エコノミスト連載『日本人のための第1次世界大戦史』
今週号、第11回は「メディア史」です。

このシリーズの原稿を一番最初にエコノミストの編集部に見せた時の反応には面白いものがありました。例えば第2回で登場したペリー来日にかかわる情報をオランダ領事館が事前に連絡をくれていたという『別段オランダ風説書』の話。

一般の編集部員からは、エコノミストの読者であっても少し難易度が高い話なのではないかとの意見が出ました。ところがとある編集者はたまたまこの話に詳しくて、この部分は面白いし西洋との関わり合いの中で幕府も充分に情報を持っていたという意味で重要なのだから、もう少し掘り下げて書いてみてはどうだという意見を頂戴したのです。

前半は当初の原稿では「戦艦の歴史」のような体裁をしていましたので、団塊世代の世代最終のお年頃の戦記物ファンには大受け、ところが平均的な若い編集者には退屈。艦コレマニアには再び大うけというような状況でした。読者ニーズは実に多様。
誰しも自分の詳しい分野には興味深々というわけです。

そうした意味で今回のメディア史はおしなべて編出者達が興味を持った話でした。何しろ彼らの産業ですから。ひとこと言い添えたいことも多々あったようです。

識字率が上昇して本や新聞の読者が増えると言っても、印刷技術の発達や紙の低価格化、人口の都市への集中、鉄道による配達網の整備、石油ランプや電燈の発明などさまざまな技術的な進歩がなければ、なかなか一般大衆が印刷物に接することは出来なかったはずです。
そうした中で特に面白いのが印刷機の進化。グーテンベルクから話すとあと50ページは必要なのでやめておきました。

画は国会図書館のWEB博覧会、「近代技術の展示場」から、ホー型10方給紙輪転機。10人の職人がタイミングよく印刷用の紙を挿入していく。凄い光景です。この後で本文にあるロール紙を使ったウォルター輪転機が登場して、大量印刷の画期となります。ロール紙の発明がいかに偉大なものだったか思いしらされます。

http://ndl.go.jp/exposition/s2/8.html

メディアの参考本はなかなか絞り切るのは難しいところです。ですが大学のテキストでもある「現代メディア史」佐藤卓巳、岩波テキストブックスは、一度は読んでおきたい本です。テキストだとは思えないほど興味深く読めます。

よく批判の対象となる朝日新聞とアジア・太平洋戦争とのかかわりあいですが、朝日新聞自身が『新聞と戦争 上下』朝日新聞取材班、を出版しています。一度読んでおくと良いでしょう。右寄りの人は朝日を攻撃するし、朝日も雑な仕事をするし、官僚的だし、決して褒められたものではないですが、朝日や毎日が政府に迎合するようになったら多分御仕舞でしょうね。そうした意味でDISられてなんぼ。

第1次世界大戦はメディアとプロパガンダが大きな影響力を発揮した戦争でした。40話前後でプロパガンダ合戦の典型的な事例としてルーヴァンの図書館炎上を扱いたいと思います。
映画ではオーソン・ウェルズの『市民ケーン』は新聞王ウィリアム・ハーストが題材。米西戦争の戦争発起の原因となったセンセーショナリズムというものを知ることができます。時間があればご覧ください。フツーに面白いです。

来週は19世紀後半の「グローバリゼーション」。穀物法の廃止から話を初めています。


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

朝日が左翼だからといって、過去の過ちも他国に迎合した捏造も許されるという事では
社会が悪くなる一方だと思うが。