2015年9月9日水曜日

「日本人のための第1次世界大戦史」第12回「グローバリゼーション」


週刊エコノミストに連載中の「日本人のための第1次世界大戦史」は第12回「グローバリゼーション」です。

どうしてこういう経済史の項目を設けたのかというと、先ず穀物法や、その廃止と英仏協商条約であるコブデン=シュバリエ条約、英国の自国船舶優先の航海法の廃止は高校の世界史の教科書には登場してきません。19世紀中ごろの自由を希求する経済制度的な動きは扱われていないのです。例えば1855年には英国で会社法の改正があり、現在のように登記だけで有限責任の会社設立が可能になったりもしていますがそうした話は載っていません。

第1次世界大戦勃発原因は、1873年の不況を原因とする各国の保護貿易志向が、各国を帝国主義に走らせやがて国家間の軋轢へと繋がってくというように教えられているのではないでしょうか。実際にはこうした立場をとっている一般教養人(?)向けの歴史書は現代では殆どありません。また英国のケープタウン→カイロ→カルカッタを結ぶ3C政策とドイツのベルリン→ビザンティウム(イスタンブール)→バグダットを結ぶ3B政策が交差して軋轢を生んだかのように教科書では書かれますが、これは当時のメディアがわかりやすく両国の愛国心を煽る記事のトピックとして取り上げたもので、よく考えればわかりますが、2つの政策は全く交差しないし、ドイツが建設しようとしていたバクダット鉄道はロンドン市場でファィナンスされる予定でした。従って現代ではこれが戦争の原因だとは考えられていません。こうしたことはロイド・キャメロンの『概説世界経済史①②』(東洋経済)あたりを読めば普通に書いてあります。

後半で紹介した小野塚知二著『第1次世界大戦開戦原因の再検討』(岩波書店)ですが、政治経済学・経済史学会2014年春季総合研究会「第1次世界大戦開戦原因の謎‐国際分業が破壊されるとき‐」の時の論文はネットで読むことが出来ます。興味のある方は検索してください。

次回第13回はこのグローバリゼーションを前提として、兵器産業がいかにして国際化されたのかがテーマです。鉄道で数十万という兵員を輸送できるようになっても、彼らに支給する銃の生産はどうしたのかという問題もあります。1840年頃のプロイセンのドライゼ銃の生産能力は年産1万丁。鉄道以前はこれで充分だったのですが、これでは新式銃をプロイセン兵士35万人に支給するには35年もかかってしまうことになります。来週号を楽しみにしてください。

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