2016年5月10日火曜日

バリュー株の復活なるか 



フジサンケイ・ビジネスアイ 高論卓説 2016年5月10日号

最近の米国市場ではバリュー株の復活が話題になっている。本稿ではバリュー株投資の概要を振り返り、今後の投資の見通しについて考えてみよう。

バリュー株投資とは割安株投資である。「割安株」とは本来の会社の持つ価値に較べて株式市場では安い株価が付けられているという意味である。しかし割安であるから必ずしもいつも儲かるというわけではない。割安には割安に放置されている理由もあるからだ。一般には株価純資産倍率やP/Eレシオと呼ばれる株価収益率などで倍率の低いものが割安とされバリュー株と定義される。

バリュー株の反対側に対置されるのがグロース株である。グロース株は「成長株」とよばれるぐらいだからいかにも儲かりそうだが、ここでいう「成長」とは、これまで成長してきたという意味で、今後も成長するのかはわからないし、これまでの成長に見合う高い株価がすでにつけられている可能性が高いので、これも必ずしもいつも儲かるというわけではない。成長株を選ぶ基準は、高い売上高伸び率や、高い収益成長率などであるが、こうした基準を満たす銘柄は、バリュー株を選ぶ際の基準であるブックバリューやP/Eレシオの高いものが多く、結果としてバリュー株の反対側に対置されることになる。一般にグロース株が上昇する時にはバリュー株は下落しやすく、この反対もしかりである。

元来、株式投資における銘柄選択は、一銘柄ずつ財務諸表をにらんで精査することによって、割安や、今後成長しそうな銘柄の発掘が行われてきた。しかしコンピュータの発達によって、財務諸表や株価のデータベースが作成され、大量の銘柄群に対して簡単にスクリーニングが実行できるようになると新しい手法が加わった。アカデミックな世界でも、投資工学が発展し、株価純資産倍率や配当利回りのような指標ひとつひとつをファクター(要素)と呼んで、過去にさかのぼって、それぞれの投資成果に対する効果を測定できるようになった。そうした研究の成果のひとつとして、ノーベル賞を受賞したユージン・ファマなどによって長期で安定して収益を稼げるファクターとして発見されたのが「バリュー効果」だった。



しかし発見された後にわかった事は、こうした傾向にも無視できない波があるということである。グラフは2000年のITバブル以降のスタンダード・アンド・プアーズ社のバリュー株指数をグロース株指数で割った倍率を示している。2000年のITバブル崩壊によってハイテク株が売られたことによって当初はバリュー株が強かったが、リーマン・ショック以降は一貫してグロース株が強かったことがわかるだろう。ここへきてその傾向に少し変調が見られるというのが米国市場でバリュー株の復活が話題となった理由である。ちなみにバリュー株の構成銘柄は、規制強化と金利低下に苦しんできた銀行株と、原油価格の低下に苦しんできたエネルギー株が主体である。仮に市場が期待するようにバリュー株の復活があるとすれば、大きな経済上のトレンドの転換を意味することになるだろう。

板谷敏彦

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