2016年8月25日木曜日

【高論卓説】日銀による株式購入 市場安定のはずが攪乱要因に


【高論卓説】日銀による株式“爆買い”の行く末は 市場安定のはずが攪乱要因に

8月23日の東京株式市場の後場寄り、前場の軟調な展開を受けて、市場では日銀が上場投資信託(ETF)を購入するのではないかとの思惑でしっかりと寄った。最近の市場では「市場を動かす一番大きな要因」として日銀の動向がスポットライトを浴びている。“ETF”と名称こそは特殊な金融商品のように聞こえるが、中身は株式そのものである。中央銀行が株式を買う行為はあまり聞かない。買い手不在の大暴落時や、持ち合い株式解消のような特定目的であれば、金融市場の安定化のために中央銀行が救済に入ることもあるだろう。しかし先進資本主義国家が、平時において日常的に株式を大量に購入して、市場関係者がその買いに対して思惑を張るというのは、その情景だけを捉えれば金融史上の珍事である。

 7月28、29日開催の日本銀行「金融政策決定会合における主な意見」によると、「ETF買い入れ額の倍増により、民間経済主体の前向きな経済活動をサポートすることが適切である」「海外発の不確実性(BREXITなど)が企業・家計の心理悪化に波及することを何としても防がなければならない。最も有効な手段はETFの買い入れであり、思い切って倍増すべきだ」「海外発の不確実性が企業や家計のコンフィデンスに影響しているため、ETF買い入れを年間6兆円に倍増するといった資産価格に働きかける緩和策が有効である」など、株式市場の水準を実体経済以上にかさ上げすることによって企業や家計マインドを向上させようというのが狙いのようだ。

これまでETFの買い付けにどのような効果があったのかはいまひとつ明らかではない。国家(中央銀行)による株式買い付けは効果もあれば副作用もある。それらを明示するために企業や家計、市場関係者などに対して心理状況(投資マインド)のモニターをすべきである。考えてみれば日銀によるETF買い付けは、2010年10月、年額4500億円で始まった。13年4月に黒田日銀の下でこれが1兆円に増額、14年10月には3兆円にまで膨らんだ。同年12月には、これに付加して投資に積極的な企業を集めたETFに1日12億円の買い付けを始めている。そして今回7月29日の6兆円への増額である。3兆円と6兆円の違いの根拠は感覚なのか? あるいは巷間(こうかん)に広まる日銀の金融政策限界説への単なる抵抗なのか。

 既に日銀は日経平均企業の9割で大株主となっている。日経平均株価指数の構造上の問題から銘柄によっては浮動株の半数以上を抑えてしまい、市場の攪乱(かくらん)要因にさえなっている。このままのペースで次回の10%増税予定の19年10月まで買い付けを続けると、日銀のETF残高は30兆円近くになり、現在の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と並んでしまうのだそうだ。株式市場から見るこの政策の問題点は、株式市場の流動性の阻害である。株式市場が流動性を失うと、価格発見能力が低下し、緊急時の価格維持能力を損なうことになる。すると皮肉なことに株式資産の不確実性は増すのである。日銀が市場を買い支えている間は、まともな長期投資家からみた投資対象としての日本株のプライオリティーは低いままだろう。当初の目的である海外発の不確実性に備えるつもりが、中央銀行自身が不確実性の源になりはしないか、次回9月20、21日の金融政策決定会合で行われる予定の、13年4月以降の政策効果についての「総括的な検証」が待たれる。


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