2018年2月1日木曜日

『昭和史の決定的瞬間』ちくま新書


備忘録として書いておく。

『昭和史の決定的瞬間』坂野潤治、ちくま新書、2004年、手にしたのは2013年の四刷り。

難易度は高いが面白い本だった。
普通の現代の知識人は、戦前日本は1936年の二・二六事件以降、テロを恐れて軍部に抵抗できる政治家がいなくなり、つまり言論も統制されて、翌年7月7日の盧溝橋事件に始まる日中戦争になだれ込み、その必然として第二次世界大戦へと至ったと考えがちだ。しかし、この理解の枠組の中では、戦前日本に存在したファッショに対抗する民主主義があたかも存在していないようではないか。という疑問から考察が始まる。

日本の民主主義は果たして敗戦とともに忽然と占領軍から与えられたものだろうか?

1936年の二・二六事件の6日前の2月20日には総選挙が挙行され、社会主義政党である社会大衆党が票を伸ばしていた事実を元に、当時の中央公論など雑誌に寄稿された記事、国会での発言等をたどりながら、当時もかなりのレベルで言論の自由が確保されていたことが検証される。これは二・二六事件以降も継続し、日本が言論の自由を喪失するのは盧溝橋事件の後であったことが明らかになる。超国家主義や、盲目的で愛国的な献身は決して日本の伝統ではなかったのだ。

言論の自由が奪われ、政党政治が抑圧されて日中戦争へと至ったのではなく、
日中戦争の勃発こそが突然言論を統制させたのだと、因果関係が逆であることを突き詰めていく。
そしてこの本の分析姿勢自体が2003年という911以降の時代性の影響を色濃く受けていることが特徴的だと感じた。


難易度が高いというのは、当時(二・二六事件当時)の帝国陸軍の中の統制派、皇道派、宇垣一派、皇道派以外という構造を多少とも理解しておかなければ読解は難しいという意味だ。調べ物が多く読破には時間がかかった。事前に『昭和陸軍の軌跡』川田稔を読んでおくことを推奨する。



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